ペルシャ絨毯には、どのような素材が使われているのでしょうか。大きく分けると、「ウール」「シルク」「コットン」となります。絨毯の産地によって、素材は変わります。ペルシャ絨毯ではパイル織りと呼ばれる作り方が一般的ですが、パイル織りには、縦糸、横糸、パイル糸が使用されます。素材として確認されるのは横糸となっています。

○シルク

シルクイランは、昔から絹の流通・生産が盛んな地でした。カスピ海南岸地方は気候的に蚕や桑を育てるのに適していたこともあり、絹の生産地として名を馳せるようになります。サファヴィー朝時代には、中国やインドにも劣らない絹の国として、生糸や絹織物を輸出していました。1800年代には生糸に替わり、ペルシャ絨毯がイランの輸出商品のトップに立ちますが、その素材としてシルクは各産地で使用されています。特にコム地方で作られるシルク絨毯は有名です。シルクは日光による変色が心配な部分もあり、ウールに比べると耐久性も落ちてしまいまですが、コム地方で作られるシルク絨毯などは、特に美術的価値の高いものもあり、絨毯としてではなくタピストリーとして楽しむ方も多いようです。

○ウール

ウールイラン中央部の高原地帯、北部の山岳地帯では、羊の放牧が盛んに行われています。ペルシャ絨毯の織り手には、遊牧民族も多数存在します。特に環境の厳しい山岳地帯で育つ羊の毛はとても強く、絨毯の素材として好んで使用されています。子羊からとれる「コルクウール」は、中でも最高の品質として知られています。耐久性に優れ、色持ちも良いウール素材の絨毯は、日常的に使用される場所に合っています。

○コットン

コットンペルシャ絨毯の8割以上は、縦糸にコットンが使用されているそうです。イランでの綿花生産の歴史は、アケメネス朝まで遡るとても古いものだと言われています。17世紀のサファヴィー朝時代には、ペルシャが広大な綿花農場を有していることをフランスの旅行家である、ジョン・カルダンが紹介しています。現代のイランでも綿花の生産量は多く、国産のコットンがペルシャ絨毯の素材として使用されています。

参考までに、前章であげたペルシャ絨毯の産地別に使用されている素材をいくつか見てみましょう。

産地主な素材
タブリーズ シルク ウール
アルデビルウール
カシャーンウール シルク
イスファハン シルク ウール
コムシルク
サンジャンシルク
ヤラメウール

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