中国緞通の歴史と特徴

中国緞通

中国緞通と日本とのかかわり

絨毯の歴史は3000年ほど前にさかのぼることが出来ます。日本の縄文時代の頃、ペルシャじゅうたんの生産地として知られる、現在のイランあたりに平織では無い「パイルのあるカーペット」が発祥しました。
そして、このペルシャの手作りのカーペット(だんつう)技法がシルクロートを経てインドや中国に伝わったのです。日本にも古くは邪馬台国の時代に中国(魏)から贈呈されたと日本最初の記録があり、正倉院には中国から渡来した「花氈(かせん)」といわれるフェルト製のカーペットが現在も保存されています。緞通の名の由来は、中国の毯子(タンツ)から緞通(だんつう)、地毯(チタン)から絨毯(じゅうたん)と和名されたと言い伝えられています。ちなみに毯子(タンツ)とは屋内敷物用織物のうち、地糸に麻糸や綿糸を使い、羊毛などの毛を結びつけて立毛にし、さらに各種の色糸を織り込んで模様をあらわした手織りの高級パイル織のものを言います。日本で現在手織りの緞通を作っているのは山形県にある手織りカーペットの工場である「オリエンタルカーペット株式会社」のみです。昭和10年、中国より7名の緞通技術者をこの東北の地、繊維と織物の歴史ある町に招き、手織じゅうたんの技術を導入し創業致しました。日本の緞通とも深く関わりが有ったのが中国の緞通です。

中国緞通の隆盛

中国緞通は中国の明朝時代、西暦ですと1368年~1644年頃から沢山織られるようになりました。中国緞通の技術はペルシャから伝わり、ペルシャ絨毯と同じように地経(じだて)糸に太い毛糸のパイル糸を結び、これを1本1本カットしながら織り上げていきます。
技術が伝わった後、厚みのあるボリュームとケミカルウォッシュでの光沢加工、そしてカービングによる浮き彫り加工など中国緞通独自織物として発展して行きました。
密度が多ければ多くなるほど、手間がかかり、繊細な柄を表現できます。その1つの表現法はボカシ技法です。絵画的図柄や精巧な刺繍文様・手書き友禅風の文様までも織り上げることができます。
コントラストがはっきりしたペルシャ絨毯に比べ、穏やかなグラデーションとふっくらとした優しい風合いが中国緞通ならではの味わいとなります。故宮博物院には宮廷用絨毯として展示され見ることが出来ます。
そのほかにも、甘粛絨毯として知られる北西地域の手織り絨毯は、クリーム色に近い淡い黄色と藍のコントラストが利いたバランスが良く、比較的シンプルな構成で落ち着いた中に力強さが感じられる品のある絨毯です。日本の手織り絨毯の元祖鍋島段通などはこの甘粛 絨毯の影響を多く受けています。

中国緞通の特徴

ペルシャ絨毯と並んで古くから世界に知られる伝統工芸美術であった中国緞通。数千年もの歴史の中で、砂漠の遊牧民の日常品であった緞通は、中国の華やかな王朝文化の中で技と洗練を極め、美術緞通へと昇華しました。
この中国緞通の特徴はカービングと呼ばれる浮き彫りとぼかしの妙技、それに独特のつや出しにあります。 柄は、伝統的な中国古来の壷などの文様を散らした北京柄、フランス王朝 ロココ時代の美術文化を全面にあしらったフランス柄。無地の緞通に花などの 図柄が浮き彫りにされた素凸柄。 梅、菊などの花が緞通の両端に織り込まれた彩花柄などがあり、普通サイズで 5~6人、大型サイズでは10人以上の女性たちの手で一つ一つ結ばれています。
足元から深々と冷えていく冬場、密に繊維が集まっている毛足の長い緞通は暖かく、見た目も温もりを感じさせてくれるアイテムです。またパイル表面のやわらかさによって足音や物を落とした時の音を吸収し、グラスやカップ等を落とした時の衝撃を緩和して割れる危険性を低めてくれるなど機能面でも様々な効果があります。

現在の中国緞通

中国緞通と言うと真っ先に思い浮かぶのが天津緞通等に代表される重厚で立体的なカービングが施された豪華で優美な花柄の緞通ですが、最近ではモダンな現代のインテリアにも違和感なくマッチできるように織り方、素材、デザインなども多様になってきています。特に、最近ではシルクやカシミヤ、ヤク、キャメルなど高級素材を使用した緞通が主流となってきています。
その産地もかつて主要産地であった天津、北京、上海、青島、大連などから河南省、四川省、青海省などへ生産拠点を移行しています。特にペルシャ絨毯のような薄くて緻密なシルク緞通や、高級な獣毛素材を使い、染色を施さずその自然色を活かして織られたシックなものの人気が高くなっています。また、デザインも従来の花柄一辺倒ではなく、古典的なものからモダンなものまで、え?これも中国緞通なの?と驚くような図案も多数あり、バリエーションが広がっております。

緞通のメンテナンス

緞通は密にパイル織されているおりもので本来非常に丈夫で、メンテナンス次第で何十年も美しさを保ってくれます。緞通のパイルは密でベロアであるため、フェルトの性質に近く、土砂やホコリ、汚れなどが堆積しやすく、取り除きにくい性質があります。ですから 毎日掃除機などで埃をパイルの根元に入ってしまう前に取ることが大切です。 シミ取り作業はよこれが付いたらすぐに落とすことが肝心、使われるパイル繊維がウールや絹になるため、放置すると除去できなくなったりします。大切な絨毯は年に1度はクリーニングに出すと美しさをいつまでも保つことが出来ます。

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