絨毯選びに大事な5つのこと。産地はそんなに大切なの?

ペルシャ絨毯の工房

日本人は産地にこだわります。緑茶でも静岡だとか京都だとか、地名に対して強烈なブランドイメージを作り上げる習慣があるので、当然海外の商品選びでも産地を非常に重視します。

例えば紅茶も、インドのダージリン地方で採られた紅茶が高く取引されています。実際に日本で流通している「ダージリンティー」は、現地ダージリンで年間に出荷される紅茶の量よりも多いといいますから驚きです。それだけ日本人は地名にお金を出すのです。

ペルシャ絨毯も一緒です。産地に非常にこだわる人が居ますが、そもそもそれほど産地は重要なのでしょうか?

日本で買う以上、産地はあまり重要でない

もちろん産地にこだわってペルシャ絨毯を選んでも構いません。いろいろある商品を前に選べなくなってしまったら、最後の決め手として産地を見たくなる気持ちも分かります。しかし、日本でペルシャ絨毯を選ぶ以上、あまり産地にこだわっても意味がありません。その理由は簡単で、日本にペルシャ絨毯を持ち込んでくる業者のほとんどが、イランの首都テヘランで行なわれる大展示会で絨毯を買い付けてくるからです。

日本に流通するペルシャ絨毯は、テヘランの見本市経由でやってくる

1年に一度行なわれるペルシャ絨毯の見本市には、世界中からバイヤーが集まってきます。その規模は尋常ではありません。幕張メッセの展示場を10倍広くしたような会場に、世界中のバイヤーとイラン国内の工房が一堂に会して、ペルシャ絨毯の売買を行なうのです。

基本的に日本にペルシャ絨毯を持ってくるバイヤーは、その見本市で買って日本に卸します。別に日本だけがそうしているわけではなく、古くからペルシャ絨毯を愛好してきたヨーロッパ各国のバイヤーも同じように、その見本市で仕入れます。

その売買の際に日本のバイヤーが重要する点は1つです。日本の消費者に売れる、好まれるデザインかどうか、その1点だけを考えるのです。もちろん質も重視しますし、有名な工房やひいきの工房は優先して回りますが、産地うんぬんというよりも、日本人に受けるデザインかどうかを見極めるのです。

そういった基準で選ばれて日本に入ってくるペルシャ絨毯が、私たちの手にするペルシャ絨毯です。産地は二の次、三の次で選ばれた商品に対して、産地うんぬんと議論してもあまり意味がないのです。もし産地をうんぬんするなら、テヘランの見本市に直接出掛けて、産地を基準に見てくるしかありません。

産地に出向くバイヤーも、産地ではなく工房を見に行く

まれにテヘランの見本市で希望するペルシャ絨毯がそろわなかったとすれば、バイヤーはペルシャ各地の産地を訪ねます。ただし、産地を訪ねるというよりも、その産地にある工房を訪ねるのです。工房が目当てなのであって、産地が目当てなのではありません。

クム産、イスファハン産などとこだわる向きもありますが、例えばクムならクムにあるラジャビアン工房、あるいはマスミ工房など、確かな技術を持つ工房に出掛けるのです。

「シルクの商品が欲しい、テヘランの見本市には出てこなかった、ならばクムのラジャビアン工房かマスミ工房に行こう。シルクならあそこの工房がトップクラスだ」

という風にバイヤーは判断するのです。そうしたプロセスを経て日本に持ち込まれるペルシャ絨毯です。基準はクム産だからではなく、クムのラジャビアン工房に、日本人の好む柄のペルシャ絨毯があったからという理由で買ってくるのです。クム産という背景はある意味で結果論です。

「産地=全て」ではない。

「産地=全て」という考え方は、時に大きな失敗を招きます。先ほどの紅茶の例で言えば、ダージリンにはキャッスルトンなどの有名な茶園があり、毎年いい紅茶をそうした茶園が作っているからバイヤーが集まるのです。ダージリンという産地は、ある意味で後付けです。ダージリンで作られたというだけで値段が釣り上がっているものの、実際に飲んでみたら粗悪な紅茶だったという例は、いくらでもあります。産地が決め手ではなく、絨毯や茶葉の質そのものが重要なのです。

優れたバイヤーがいるお店を探そう

大手の絨毯メーカーには専属のバイヤーが居ます。個人で商店を営んでいる方は、その店主がバイヤーを兼ねています。気軽にテヘランへ行けない以上、そうしたバイヤーに仕入れをお願いするしかありません。

基本的にいいペルシャ絨毯を手に入れたいと思えば、世界中のバイヤーに負けずに優れたペルシャ絨毯を引っ張ってこられるバイヤーの居るお店を探した方が早いです。優れたバイヤーは先のテヘランで開かれる見本市でも各工房にパイプがあり、優れた商品を適正な価格で仕入れられる力を持っています。日本でペルシャ絨毯を買う以上、

いいペルシャ絨毯=産地

ではなく、

いいペルシャ絨毯=いいバイヤー

という図式の方が重要です。別に個人店だから大手のバイヤーに負けているかと言えばそうではありません。個人商店にせよ、大手にせよ、現地と圧倒的なパイプを持ち、優れた鑑識眼を持つバイヤーを探してください。

バイヤーと仲良くなれば、自分の希望するペルシャ絨毯を、テヘランの見本市で代わりに仕入れてきてもらえる可能性もあります。特別注文で買ってきてもらうのです。ヨーロッパの裕福な顧客は、そのような方法で手に入れているので、日本人の皆さんも、懇意のお店とバイヤーを見つけて、希望の商品を買い付けてきてもらうといいです。お店の側も売れ残りのリスクがなくなるので、喜んで受け付けてくれます。

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